流れ・波・熱の複合的な物理現象とその応用を「数式」で開拓する
(PI: 金川哲也)
メンバー (14名)
D2:1名(学振DC1)
D1:2名(学振DC1・国費留学生)
M2:4名
M1:2名
B4:2名
B3 (ARE/早期配属):1名
IDE:1名
准教授:金川哲也
<大学院進学希望の学外(もしくは工学システム学類以外)の方へ>
流体力学の数学的な理論的研究に強い関心があり、数理解析能力に長けた方を募集しています。指導の質を維持するため、学生数には上限を設けています。本研究室で修士論文・博士論文研究を遂行するためには、数学および流体力学に関する相応の基礎知識・理解・能力が不可欠となります。これまでの履修状況や成績などを踏まえて、受入可否を慎重に判断しますので、まずはご一報ください。
金川の承諾が得られた場合には、構造エネルギー工学学位プログラムの入学試験において、金川を指導教員として希望したうえで、ご受験ください。ただし、当該学位プログラムへの合格と、金川研への配属は独立です。入試は、7月(推薦)・8月(一般)・1~2月(一般)の計3回行われます。博士前期(修士)の場合は、例年、金川研に配属される学生のほぼ全員が、推薦入試で合格している傾向にあります。推薦入試の受験資格として、高い学業成績が必要です。
過去の例ですと、かなり早期から(遅くとも3年生のうちに)、明確な希望をもってご相談いただくケースが殆どです。実際に、理学部数学科と地球学類からの進学例が複数件あります(全員、数値計算で卒論を書かれていましたので、理論解析の経験は必須ではありません)。
<学振PD受入れ>
ご専門が流体の理論でなくても、流体の実験から理論への転向、固体の理論から流体への転向など、研究上のマッチングが取れれば前向きに検討します。まずはお問合せください。
研究内容
【全体像】新しい熱・流体力学を切り拓く理論の創成が究極的な目標です。
界面をもつ流れ(混相流・気泡力学など)を対象に、主として連続体力学を中心に、非平衡統計力学や分子動力学の視点を統合し、マクロからミクロまで一貫した数理モデルを構築します。
流体力学と異なる観点の柱に、「非線形波動理論(衝撃波・ソリトンなど)」があります。応用研究として、超音波医工学(集束超音波治療・結石破砕・ドラッグデリバリ・被膜気泡)、血管内における気泡力学、火山噴火と地震波、海洋資源探査といった多様な応用の数理解析へ展開します。共同研究の形で、CFDや実験との融合を行っています。
【学生の研究】混相流は、界面を有することから、連続体ではありませんし、狭義の流体力学は使えません。それでも、平均化を駆使することによって、数理的には、連続体力学的なアプローチが可能となります。一方では、そのようなアプローチにも限界があります。
そこで、本研究室で学生が取り組む研究は、現在、以下の4点に大別されます:
1.混相流の基礎方程式の構築およびその数学的適切性の検証
2.1を基にした波動伝播の解析および応用(医療・地球科学・防災・航空宇宙・海底資源探査など)
3.2を発展させる他の手法との融合研究(AI、分子動力学シミュレーション、解析力学、数値流体力学、力学系、各種応用数学)
4.混相流の数理に関する企業共同研究(2024年度から)
学類生あるいは新M1が配属された場合には、上記2を与えるケースがほとんどです(金川のライフワークはこちら)。
上記1はチャレンジングな要素があり、博士後期課程の1期生が取り組みました(その成果から学長表彰を2回受賞)。一方、学類生も取り組む場合もあります。
上記3は、現在在籍中の博士後期学生3名が取り組んでいます。
配属直後は、金川からテーマを与えて(基本は上記2)、成果をだし、論文出版までのサイクルを早期に回すことで、研究の全体像を習熟させるとともに、学振特別研究員DC申請の布石にもします。その後、M2くらいになると、知識が増えており、自身でテーマを見出すケースが多いです。本研究室の守備範囲ではなく、実現可能性が低そうであったとしても、計画や方向性に致命的な穴がなければ、意思を尊重しています。そのように始めたテーマは、結果が出るまでに相応の時間がかかっていますが、その分、成功時のインパクトが大きいです。
実験を含め、共同研究を活発に行っており、2025年度は学生の半数が、他大学(海外含む)の研究者または企業との共同研究に参画しています。ただ、新配属生は、まずは金川とのマンツーマンでのテーマから入っています。
研究室運営方針
金川個人は、紙とペンで流体(に限られない連続体)の力学現象を数学的に表現し、その結果として物理現象を予測することに関心があります。手で追える範囲までは解析的に考え、手で解けなくなるまでは数値計算には頼りたくないという思想です。出身も所属も工学の人間ですが、やっていることは理論物理に近いところがあるかもしれません。とはいえ数学者ではないので、例えばナビエ・ストークス方程式の解析解そのものに強い関心があるわけではありません。理論的な見通し抜きに、トップダウンで大規模な数値計算に進むようなスタイルも、あまり好みません。このあたりの考え方は、この15年ほどあまり変わっていません。
一方で、考え方が変わってきた部分もあります。かつては比較的狭い領域の基礎研究に強い関心がありましたが、最近は応用も面白いと感じるようになり、守備範囲を広げつつあります(そもそも、基礎と応用のあいだの境界は極めて曖昧です)。関心は一貫しているようでいて、配属される学生の影響も受けながら、少しずつ移り変わっているのだと思います。
勿論ですが、所属学生諸君の志向は必ずしも金川と一致していません。多様な人材を歓迎します。 ただし、「手計算が好き(少なくとも嫌いではない)」という点は全員に共通しており、実際、本研究室で研究を行うための最低条件でしょう。また、「研究面で細かな作業を丁寧に積み重ねることが得意」である点も共通しています。思いつきやアイデアだけで突っ走る研究室ではありません。 共通点を除けば、実験にも関心を持つ学生、応用寄りのテーマを選ぶ学生、数値計算や機械学習を組み込んでいる学生、医療応用に関心を持つ学生、卒論で理論を一通りやり切ったので(≠嫌いになったので)数値計算に軸足を移した学生など、背景や志向はかなり多様です。
いわゆる「一致団結」的な運営、体育会的なノリを好む研究室ではありません。開設以来、卒論を締切直前に出した学生は一人もおらず、数日前に終わらせています。決して、直前の提出を禁止はしていませんが・・・。おそらくは、徹夜で研究している学生もほぼいないと思います(自由としていますが)。
研究面では個人プレーでも構いませんし、コロナ禍には一度も大学に来ず、一流国際誌に複数編掲載させた学生もいました。ただ、あくまでも教員の視点からですが、学生同士の仲は良く、雰囲気も良いと思います。
開設以来、ゼミは一度も行っておらず、個別の研究報告会をもってゼミとしています。順調に進んでさえいれば、報告も最低限でよいとしています。配属当初は週一で様子を見ますが、学年が上がるにつれて、手を放すケースが多いです。飲み会なども含め、完全な自由です。自宅で研究を進める派の学生も多いです。逆にいえば、自主性・自律性が備わっていることを前提として、指導にあたっています。
担当科目
◆『熱力学ー工学の基礎を深く丁寧に学ぶためにー』(共立出版)が2026年2月26日に出版されます。自信作です。
◆ 工学システム学類 (学部):
熱力学基礎・応用熱力学・応用流体力学・応用数学A(後半:フーリエ解析)
◆ 構造エネルギー工学学位プログラム (大学院):
混相流工学(4コマ担当:気泡力学とレオロジー)
◆ 学位審査:博士論文(主査1名)、修士論文(主査16名)、学外Ph.D審査1件 (IIT Delhi)
論文リスト
博士前期(修士)修了までに、国際誌に学生の論文が採択されています。学類(学部)生でも掲載例があります。最近は、国際共著も活発に出版しています。
査読付き雑誌論文47編中、金川が責任著者のものが38編、top 10% ジャーナルが20編です。
受賞歴
修士修了までに、OBOG含む全学生が受賞歴を有します。比較的新設研究室ですが、学生諸君の受賞歴は累計100件以上にのぼります。
日本機械学会三浦賞を10名、筑波大学学長表彰を8名、日本混相流学会萌芽賞(鮎貝崇広氏)など。
博士後期・前期修了生は、企業や研究所で活躍しています。
共同研究
様々手掛けていますが、いずれも「混相流」と「波動」の観点からのマッチングです。お気軽にお声かけください。
産学連携:気液混相流れの過渡的圧力変動のモデリング手法(三菱重工業株式会社)
海外共同研究:ソルボンヌ大学 (Prof. O. Couture & Dr. G. Chabouh): 血管内の気泡力学に関する理論と実験
国内共同研究:
極低温流体中のキャビテーションのモデリングと数値計算 (九州大学・津田伸一先生)
脂質膜の分子動力学シミュレーション (東北大学・馬渕拓哉先生)
脂質膜のモデリング (九州大学・武石直樹先生)
重質油回収のための多孔質媒質のモデリング (筑波大学・松島亘志先生)
非線形波動方程式の係数推定逆問題 (筑波大学・三目直登先生)
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