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学生インタビュー記事
鮎貝崇広(D3)へのインタビュー記事が掲載されました。システム情報工学研究群で開催された博士後期進学説明会の座談会登壇を受けて、おもに、博士後期課程への進学の検討についての内容が書かれています。
講演会参加記
計算工学夏季学生講演会に参加した学生に参加記を書いてもらいました(金川)。
・はじめに
夏季休業中に日本計算工学会が主催する夏季学生講演会(@筑波ふれあいの里)に参加しました。金川研がこのイベントに参加するのは今回が初めてで、私も金川先生を通してこのイベントの存在を知ったという状態だったのですが、研究の交流の幅を広げたい、また博士課程進学やその先の進路に関する情報を得たいという思いがあり参加しました。講演会は一泊二日のキャンプ形式となっており、二日間で講演を聞いたり研究発表を行ったりしながら、参加者の方々と楽しく交流しました。
・講演
一日目の昼に、産官学の研究者の方々から博士号取得後の研究者としてのキャリアパスに関する講演をして頂きました。以前から博士号取得後は大学への就職を目指すというキャリアが一般によく知られていたと思いますが、大学以外にも国研や企業の研究職に就くという選択肢もあり、キャリアパスにも多様性と自由があることを知ることができました。実際、大学(高専)・国研・企業のいずれか2つ以上のキャリアを経験されている方も講演されていました。
・バーベキュー、懇親会
講演が終了した後のバーベキューや懇親会では、研究に関係すること・しないことについて、飲食しながら自由に話し合っていましたが、その中で私は博士課程の経済事情について相談させていただきました。私は博士課程進学に興味がありますが、進学する場合の不安要素として、生活費・学費などの経済的要素が一番大きいと考えています。そこで、研究者や博士課程在籍中の方々に、経済的な問題にはどうやって対処していたかを伺いました。結論から言えば、様々な助成制度(学振・JST、各大学の制度等)を駆使すれば殆どの問題は解決するとのことでした。しかし、私は助成制度についてほとんど知識がない状態だということを自覚したので、利用できそうな制度に目を向けてみることも必要だと思いました。博士課程には興味があるが経済的懸念がある学部(学類)生や修士課程の方はそういった制度について調べてみるのがよいかもしれません。
あとは、なぜ博士進学を志したか、そのきっかけは何だったのかを尋ねましたが、これは割と人それぞれの理由がありました。ただ、やはり最も多かった理由は研究を深掘りしたいというものでした。一方で、あまり深く考えず博士課程に進学しても人生なんとかなるし、何かしらには引っかかるだろうという楽観的な姿勢で構えても大丈夫だということを仰っていた人が何人かいました…。私としては、当然やらなければならないことはやる必要があるけれども、メンタルとしてはそのくらいの気持ちで余裕をもって臨むのがよいということだと受け取りました。他にも色々な話を伺いましたが、博士課程の方が普段どのような気持ちで研究と向き合っているのかを聞けたのは大変有意義でした。
また、バーベキューでは研究とは関係のない話も沢山しました。本筋とは関係がないので割愛しますが、一番盛り上がったのは(やはり)大学ネタでした。夢中で話をしていたらあっという間にバーベキューが終わってしまい、結局私は肉を一枚も食べていませんでしたが、それでも満足でした。
・ポスター発表
二日目に、朝食を取った後にポスター発表を行いました。とはいえ、普通にポスター発表をしただけですので、特に書くことがないです…。ただ、普段の学会と比較するとラフな感じで、議論メインというよりは交流と研究紹介の意味合いが強いセッションだったと感じました(普段の学会も研究紹介を兼ねているのはもちろんそうですが)。なお私と一部の学生はお互いの研究への興味が尽きず、発表時間以外にもポスター発表をしていました笑。
ポスター発表が終わった後は解散し、大学まで送迎して頂きましたが、送迎車の中では研究の話はあまりせず、家系ラーメンは好きか嫌いかのような他愛のない話をしていました…
・おわりに
楽しかったので真面目なこと以外も少し書いてしまいましたが、本講演会は今後のキャリアを考える上で貴重な話を、普段だと会う機会がほとんどない博士課程以上の方から多く聞ける機会であり、参加してよかったと強く思っています(M1 長谷川)。
日誌
B3の学生(早期卒業研究履修者)に日誌を書いてもらいました(金川)。
おそらくこの日誌を見て研究室配属を考える方もいらっしゃると思うのでなんだか少し責任があるような気もしますが(私もそうだったので)、私からは研究室配属後から今までどんなふうに研究が進んできたかと、9月に行った学会見学の感想を述べたいと思います。
私は早期卒業を希望しているので研究室配属時期が5月初めと遅かったです。そこから金川先生とオンラインや対面で面談を何回か行い、どういった風に進めていくのか、自分の興味が何なのか(生体膜とたんぱく質に関心があったがより掘り下げた)などを確認しました。春学期は主に勉強を行い、金川研で用いられている手法に関わる式の導出方法などを学びました。ただ、授業も普通にあったので研究関連の勉強の量は多くはなかったです。金川先生からは授業やテストを最優先にしてもよいと伝えられていたのでなんとなく気持ちは楽でした。実際に研究テーマが決まり、本格的に研究を始めたのは夏休みが始まる頃だったかと思います。とはいっても、金川研の研究は手計算がメインなので個人で行う部分がほとんどです。コアタイムや参加必須のゼミなどはなく、研究室に行く必要は全くありません。研究室に配属されて5か月ほどたちますが、私はいまだに研究室まで1人でたどり着けるかわからないです。これを利点と取るか否かは人それぞれだと思いますが、私は、一人で作業するのは嫌いではないので苦ではありませんでした。質問があればTeamsで先輩や先生に聞くことができて、先輩方は会ったこともない私にも、かなり親身になって答えてくれます。授業関連の質問にも答えてもらっていてとても助かっています。(過去問も豊富。) 夏休みは、主に家で、たまに図書館などで研究を行い、10-14日ごとくらいで先生と面談→進捗確認というような感じでした。秋学期になり、授業が始まってしまったので研究にさける時間は少なくなってしまうと思いますがうまくバランスをとってやっていけたらなと思います。
話は変わりますが、9月に流体力学会の年会を見学してきました。学会というものが初めてで何がどのように起こるのか全く分からず不安でしたが、色々な学生や先生の発表を聞いて、内容を理解できるものは少なかったものの、とても刺激的で有意義な時間でした。特に、金川研の先輩方の発表をみて、私も先輩方のように発表できるように頑張りたいと思えました。また、特別講演として聞いたBrown University のRoberto Zenit教授の講演では、Zenit教授の流体力学の研究への熱や愛が伝わってきて、研究者ってすごいなと思ったと同時に自分のモチベーションを高める要因にもなりました(B3)。
ターボ機械協会 創立50周年記念行事(金川)
(一社)ターボ機械協会の創立50周年記念行事に参加しました。
分科会ワークショップー国内若手研究者によるキャビテーション研究の最前線に関する講演会ーで、金川が、基調講演「気泡流の二流体モデルとそれに基づく非線形波動伝播の解析」を行いました(2023年9月20日(水)早稲田大学国際会議場)。
ターボ機械協会より、金川がチャレンジ大賞を受賞しました(2023年9月22日)。
日本流体力学会年会2023
日本流体力学会年会2023@東京農工大学(2023年9月20-22日)で、学生5名が、以下の口頭発表を行いました。また、B3の学生が学会を見学しました。
Nguyen (M1):Effect of variation of initial surface tension of shell coating microbubbles on weakly nonlinear ultrasound in bubbly liquids
中村(M1):気泡流中におけるボイド波と遮断周波数帯圧力波に関する線形理論
長谷川(M1):粘弾性気泡流中の超音波伝播に関する弱非線形特異摂動解析
邉見(M1):気泡流中の非線形圧力波に気泡間相互作用が及ぼす影響
渡部(B4):気泡流中における弱非線形波動に壁面潤滑力が及ぼす影響
学振特別研究員DC1内定
博士後期課程への進学予定のM2学生が、日本学術振興会 2024年度 特別研究員-DC1に採用内定しました。おめでとうございます。
研究課題名「超音波医療用の脂質膜で覆われた気泡のミクロとマクロを接続する新たな数理モデル」
金川研での博士後期進学者は2人目です。両名ともにDC1に採用されています。
JSCESサマーキャンプ
日本計算工学会夏季学生講演会2023(サマーキャンプ)(2023年9月23-24日、筑波山)に参加し、以下の講演を行いました。また、長谷川(M1)が優秀ポスター賞を受賞しました。
今後、数値計算のウエイトを増やそうと考えており、学生含め初参加でしたが、普段交流できない方々と情報交換することができ、充実した2日間でした(金川)。
鮎貝崇広(D3):博士学生の招待講演「気泡を含む液体の流れを記述する基礎方程式の開発とマグマへの応用」
長谷川建(M1):ポスター発表「気泡を含む液体の弾性が超音波の弱非線形伝播に及ぼす影響の理論解析」【優秀ポスター賞を受賞】
川畠稜輝, 金川哲也, Chabouh, G.: ポスター発表「異方性を有する弾性膜で覆われた医療用マイクロバブルの非線形数理モデル」
金川哲也:学生向けの招待講演「博士進学と大学教員の実態と魅力(ある個性派教員の場合)」
日本流体力学会 竜門賞
金川が、日本流体力学会より、2022年度学会賞の竜門賞を受賞しました(2022年12月17日付)。長い間憧れていたので、とても嬉しく光栄なことであり、今後も流体力学の研究に励みます。ご推薦、ご選考、ご指導いただきました先生方に感謝申し上げます。
学会誌『ながれ』2023年6月号(第42巻第3号)に解説記事を執筆させて頂きました(PDF版が掲載されました(2023年8月22日更新))。日本流体力学会年会で受賞講演を行います(2023年9月20日)。
日本流体力学会竜門賞について:流体力学の発展に寄与した論文を査読のある雑誌に発表し,独創性と将来性に富むと認められる個人(40歳未満の当該学会会員)に授与する.
IUTAM Symposium
IUTAM Symposium on Nonlinear dynamics for design of mechanical systems across different length/time scales (Core A) (つくば市, 2023.7.31-8.4) において、4件の発表を行いました。
普段参加している流体力学や超音波関連のコミュニティと異なり、非線形力学の横断的な観点からの情報交換と交流ができました。
- Hasegawa & Kanagawa, Theory and computation of weakly nonlinear ultrasound propagation in a viscoelastic bubbly liquid
- Nguyen & Kanagawa, Weakly nonlinear ultrasound propagation in liquids containing multiple ultrasound contrast agents with shell in buckled or ruptured states
- Kawahata, Kanagawa & Chabouh, Effect of microbubble coated with anisotropic shell on ultrasound propagation in liquid containing multiple microbubbles
- Kanagawa & Kagami, Theoretical and numerical analysis on nonlinear propagation of focused ultrasound in bubbly liquids toward cancer treatment by microbubble-enhanced HIFU
TRiSTAR フェロー (金川)
金川が、大学×国研×企業連携によるトップランナー育成プログラム(TRiSTAR)の育成対象者 (文部科学省「世界で活躍できる研究者戦略育成事業」) の第3期フェローに認定されました(2023年7月12日付)。
課題名は「気泡と超音波の相互作用の数理モデルを基軸に置いた生命や地球への分野横断・異分野融合型の応用の探究」です。国際共同研究の強化と産学連携研究の開始などに向けて尽力します。
JASSO第一種奨学金免除
昨年度修士卒のOB(金川研4期生)3名のうち、JASSO第1種奨学金を貸与していた2名より「特に優れた業績による返還免除」を受けたとの連絡をもらいました(1名全額免除、1名半額免除)。誠におめでとうございます。
金川研では、OB・OGを含め過去の貸与者全員(累計10名;うち、4名全額免除、6名半額免除)が返還免除を受けており、全額免除者も毎年継続的に出ています。
国際会議 AJK-FED2023
Nguyen Nam Quoc (M1) が大阪で開催された日米韓機械工学流体工学国際会議 (AJKFED 2023: The 4th ASME-JSME-KSME Joint Fluids Engineering Conference) において、口頭発表 ”Nonlinear Ultrasound Propagation for Different Initial Surface Tension of Shell in Liquids Containing Multiple Ultrasound Contrast Agents” を行いました(2023年7月11日)。
Phys. Fluids (異方性シェル気泡)
川畠稜輝(M2)の論文が Physics of Fluids (IF_2022 = 4.6, Q1) から出版されました(2023年7月12日)。
フランス Sorbonne Université の G. Chabouh博士との国際共著論文です。異方性を有するシェルで覆われた気泡群の非線形音響特性を理論的に調べました。発展課題として、超音波診断応用上有益な、減衰の抑制と非線形性の増強を両立可能な異方性のパターンはありうるか等を、目下検討中です。
Ultrason. Sonochem. (粘弾性混相媒質中の集束超音波)
加賀見俊介(元M2)の論文が、Elsevier の Ultrasonics Sonochemistry (IF=9.336)(Q1: Acousticsで1/32) から出版されました。 集束衝撃波によるキャビテーション結石破砕医療を想定し、3種類の粘弾性構成式を用い、二相媒質中の超音波伝播の数理モデルを構築し、肝組織を例示した数値計算を行いました。
JSME若手優秀講演フェロー賞
川目拓磨(元M2)が、日本機械学会若手優秀講演フェロー賞を受賞しました。 受賞対象論文は「相変化を伴う気泡流中での圧力波伝播の理論解析」(2023年3月:関東支部第29期講演会)です。 20名に1名の高倍率で授与され、発表内容の新規性やレベルも評価対象となります。
金川研日誌(5/25)
新B4に日誌を書いてもらいました(金川)。
今年から配属になったB4です。短いですが、この研究室に配属されるまでの経緯と配属後から今に至るまでの生活について書いていきたいと思います。
私が金川研究室に興味を持ったのは、金川先生の数学を用い、厳密性を重視して物理へと向き合っている授業を受講したときです。自分の性格的にこういった理論研究ができればいいなと思っていました。また、単に勉強のことだけでなく、論文の書き方や研究発表のプレゼンの仕方などまだ慣れていなく上手くできないであろうことに対するフォローも手厚いと聞いていたからです。しかし、最終的に金川研究室を選んだ理由は、ネガティブなものと俗っぽい理由が多いです。まず、私は不器用なので実験が必要になる研究室には行きたくないと思っていたこと(授業の実験でもうまくいったことが少なくてレポートが大変だった)。パソコンのタイピングは遅いし、プログラミングも好きじゃないのでやりたくなかったこと(ずっとパソコンに向き合っていると目が痛くなる)。また、コアタイムなどはなくオンラインでの面談が主になるからそのためだけに登校しなくてもよいこと(授業のない長期休みには県外の祖父母と過ごしていたかった)。学生室の環境が良さそうだったこと(最新のエアコンと大きな机がある)。先生が雑務を頼んできたりすることがないこと(この日誌も多分断ればそれで終わる)。勉強道具を研究費から買ってもらえること(出費が抑えられてラッキー)。先生とスイーツ食べに行けそうだったこと(甘党で何が悪い!?)。等が挙げられます。
4月に入ってからは、大体週1回のペースで先生と面談を行い、研究の基礎となる方程式についての勉強などを行っています。研究のテーマは希望すればそのテーマを与えてもらえ、質問すればその対応もしっかりとしてもらえます(自主的に動く姿勢は大事)。また、研究室にいる先輩方は皆さん優しいので質問するとどんなことでも丁寧に教えてくれます。また今月の中旬には学会見学ということで福岡で行われたターボ機械協会第88回総会に出席しました。同研究室の先輩や他大学、企業の方の研究発表は内容を全て理解できるわけではないものの興味深いものが多く、またプレゼンの仕方の勉強にもなりました。特にキーノート講演として行われた九州電力の方のお話は研究の実用化というところまでが想像でき、研究を楽しくするものになるなと感じました。金川研究室は学会に行くとその当日以外は拘束が全くないので自分の好きなことができます。私は同期の人達とともに有名なスイーツが売っているお店を計10店程訪れたり、福岡の名物であるとんこつラーメンを屋台に食べに行ったりしました。また、学生では訪れるには値段的に少し抵抗があるようなお店に先生に連れて行ってもらい名物をほとんど飲み物代だけで食べさせてもらえたりもしました。
最後に研究室配属になってからの私のとある一日の過ごし方を紹介します。
6時 起床、朝食と昼食用の弁当を作り、朝食を食べる。
7時 洗濯物を干すなどの家事を一通り済ませる。
8時 研究室へ向かう 到着 研究室に備わっている冷蔵庫の中に弁当を入れておく
8時40 1限があれば取り組み、無ければ課題や研究に取り組む
11時30 研究室に備わっているレンジを使い弁当を温めて食べる。
12時15 3限以降の授業、または課題、研究
19時 下校
というようなサイクルになっています。なんといっても研究室に冷蔵庫とレンジがあるのがいいですね。3年生のころまでは図書館で勉強をしていても食事の度に帰宅せねばならず面倒だったし、弁当を作っていってもどうしても冷めてしまうのでメニューも断念するものが多かったですが、冷蔵庫と電子レンジがあればどんなメニューも温かい状態で食べることができます。
というように快適に1日勉強に取り組める環境が金川研究室には整っていると感じています(B4)。
学生表彰
鮎貝崇広(D3)が、ターボ機械協会第88回総会講演会(福岡)において、若手優秀講演賞を受賞しました。21名の若手講演者中、2名の受賞者の内1人に選ばれました。
講演題目は「高精度キャビテーション予測に向けた気泡流モデルの開発とその安定性解析」で、気泡流の二流体モデル基礎方程式に関する内容です。原著論文はこちらです。
早期卒業研究B3配属
早期卒業研究を履修中の工学システム学類3年生の1名が金川研に配属されました。飛び級に相当し、3年次には講義と卒研を並行で進め、3年間での卒業(学士号)を目指すものです。2年次までの成績が極めて良い場合に履修が可能となります。
研究群HPにOBの2名のメッセージ掲載
金川研日誌(5/8)
新B4に日誌を書いてもらいました(金川)。
B4で今年度から配属されました。自分が金川研を選んだ理由とこれまで(配属から2か月)で感じたことを書こうと思います。
まず、自分が金川研を選んだ理由は先生からのサポートが手厚いことと自由に研究できることです。私は研究内容にはさほど拘りはなく、面倒見がどれだけいいのかという点で研究室を選んでいました。私は分からないことがあるとすぐ人に相談したくなるタイプの人間なので、面倒見のいい先生のもとでたくさんアドバイスをもらいながら研究したいと考えていました。金川先生は授業を受けた際にとても生徒のことを考えてくれているなと感じ、また実際に配属された先輩たちの意見でも面倒見がいいと聞いていました。もう1つはコアタイムやゼミなどで拘束されることがないという風に聞いていたので、研究をしたいときにできるというのはマイペースな私にとってとてもいい研究室だなと感じました。以上の理由から金川研を志望しました。
実際に配属されて2か月ほどが経ちましたが、先生とはだいたい週に1回のペースで面談を行い、研究のための勉強会や進捗に対するアドバイス、不明点の相談などを1時間から1時間半ほどかけて話しています。面談は1対1か同期を交えた3人で行っていて、少人数のため質問しやすく、とても有意義な時間であると感じています。また自由な研究ができるというのも聞いていた話そのままで、拘束されることは一切なく、私は研究がしようと思った時だけ学生室に行って研究しています。
研究についてはテーマがなんとなく決まった程度でまだ勉強の段階ですが、ひたすらに手計算で式を変形していくもので、個人的にはとても興味深く面白いなと感じています(B4)。
Int. J. Multiph. Flow (二流体モデル方程式)
鮎貝崇広(D3)の論文が、Elsevier の Int. J. Multiphase Flow (IF_2021 = 4.044, IF_5year = 3.972; Mechanics で Q2 (37/138); CiteScore = 6.4) から出版されました(2023年5月3日)。
キャビテーションの影響を評価するための平均化気泡流モデルに対し、熱減衰の効果を表すエネルギー保存方程式を新たに導出しました。このエネルギー保存式が、基礎方程式系の解の安定性を向上させることも示しました。
サイエンスカフェ講師(金川)
2023年5月1日、茨城県立並木中等教育学校におきまして、SSHサイエンスカフェ「暮らしの中の流体力学~物理と数学の世界~」の講師を務めました。生徒さんからは鋭いご質問を多く頂きました(金川)。
Nonlinear Dynamics (超音波造影気泡の非線形連続体力学)
Nguyen Nam Quoc (M1) の論文(粘弾性膜の表面張力変化・座屈を伴う超音波造影剤の群としての数理モデル)が、Springer の Nonlinear Dynamics (IF2021=5.741; Engineering, Mechanical および Mechanics でQ1) から出版されました(2023年4月26日)。
Phys. Fluids (粘弾性キャビテーション)
長谷川建(M1)の論文(粘弾性気泡流中における超音波の数理モデリングと数値計算)が、AIP Publishing の Physics of Fluids (IF2021=4.980, Q1) から出版されました(2023年4月5日)。最近実験研究が盛んに見受けられる粘弾性キャビテーションの予測や生体媒質モデルへの活用などが期待されます。
Int. J. Multiph. Flow (多分散気泡流)
川目拓磨(元M2)の論文(多分散気泡流中における弱非線形波の伝播)が、Elsevier の Int. J. Multiph. Flow (IF2021 = 4.044) から出版されました(2023年4月5日)。
ICMF / IJMF
鮎貝崇広(D3)が神戸で開催された第11回混相流国際会議(ICMF: Int. Conf. Multiph. Flow) において、ポスター発表”Well-posedness and stability of two-fluid model equations for high speed bubbly flow” を行いました(2023年4月3日)。
先月、Int. J. Multiph. Flow に採択された論文の内容を含みます。
JSME卒研発表講演会ベストプレゼン賞
日本機械学会関東支部第62回学生員卒業研究発表講演会(2023年3月16日、オンライン開催)において、長谷川建(元B4、現M1)の口頭発表「気泡を含む粘弾性体における超音波の理論解析」が、Best Presentation Award を受賞しました。
当該発表内容の一部は既に国際誌に掲載されています。
2023年度
2023年度のメンバーは、D3の1名(学振DC1)、M2の3名、M1の4名、B4の2名、学生は計10名です。M2は博士後期進学も視野に入れています。M1は全員学内からの進学です。B4は、今回から卒研配属が遅くなり、まだ勉強に着手し始めた段階で、5月頃には研究テーマを決められればと考えています。
理論・数理を基軸に置く方針に変化はありませんが、数値計算のウエイトの増強、実験研究者との連携、生体応用(医用超音波)への新展開を強化したいと考えています。昨年度より、細胞膜の生物物理に関する学内共同研究、医用超音波と固気液三相連続体力学の国際共同研究に着手しており(国際共著論文1編採択)、理論だけでは手の届かない領域を相補・連携によって開拓したいと考えています。
研究室とは無関係ですが、金川は、
- 2021年度から立ち上がった、総合学域群第2類(理系I)の1年生のクラス担任を仰せつかりました。2018~2021年度に工学システム学類の担任を4年間持ち上がってから、1年ぶりの担任業務ですが、選抜制度・学類移行等について右も左もわからない状態で、勉強中です。
- 京藤敏達先生がご担当されていた、応用流体力学(2年秋学期ABモジュール、火曜3・4限、2単位)を新規担当させて頂くこととなりました。流体力学の基礎方程式系の理解に大きなウエイトを割く予定で、準備を進めています。熱力学基礎、応用熱力学、応用数学A(後半)、エネルギー・メカニクス専門実験(沸騰伝熱分担)、混相流工学(分担)は継続担当します。
今年度もよろしくお願いします(金川、2023年4月1日)。
研究成果報告(JKA研究補助)
公益財団法人JKA様の「2022年度 水中の衝撃波とソリトンそして気泡の利活用による水管の損傷抑制と管壁洗浄の技術開発 補助事業」を遂行し、以下の成果を上げることができました。なお、本研究は、競輪の補助を受けて実施しました。ここに報告するとともに、ご支援に感謝を申し上げます(2023年3月31日 補助事業者:金川哲也)。
1.研究の概要
水管は、ライフラインやポンプなど、我々の生活に欠かせない必需品である。本事業では、この水管に見られる損傷を抑制すると同時に、管壁の汚れを洗浄することを目指す。水管損傷の要因は、水流中における衝撃波の形成である。衝撃波は損傷を招く悪者だが、水流中に空気を流し、マイクロバブルを効果的に用いると、衝撃波をソリトンという安全な波に変換できる。一方、衝撃波を適切に利用すると管壁の洗浄も可能となる。以上のために、衝撃波とソリトンの切替を可能とする理論的基盤を確立させる。
2.研究の目的と背景
目的は以下の2点に集約される。いずれも、衝撃波とソリトンの制御と利活用が本質であり、衝撃波とソリトンを記述可能な数理モデルを構築し、衝撃波とソリトンそれぞれの形成条件を解明する:(1)水中における気泡の振動のうち、弱い非線形性のみを上手く利用して、衝撃波をソリトンに変換し、その上で水管から放出させて損傷の懸念を排除する。本構想は前例がないため、実現に向けた基盤理論から構築する。(2)逆の原理で、水管に除去すべき汚れが存在した場合に、弱めの衝撃波の熱的散逸効果を利用して汚れを洗浄する。
3.研究内容
上記目的の(1)と(2)において鍵となるのは、衝撃波とソリトンである。そもそも、衝撃波は圧力波の非線形効果と散逸効果の釣合で、ソリトンは非線形効果と分散効果の釣合によって形成される。非線形効果に対する、散逸・分散効果の比率という意味において、形成の起源は似ているが、両波の物理的性質は全く異なる点が重要である。そこで、非線形・散逸・分散という「3性質」を求め、比較を要する。しかし、実験と数値計算からは計測値(圧力等)や波形という現実概念は判明するが3性質を求められない点が重要である(「分散計」は存在しない)。
そこで、理論的視点に立つと、衝撃波とソリトンを共に記述可能な数理モデルを創ることが可能である。それは、「弱非線形方程式」という、非線形項・散逸項・分散項の線形和で、3つの係数が3性質の大きさを表す方程式である。弱非線形方程式は、気泡流の運動全てを記述する基礎方程式系(約10連立方程式)から導くことができる。弱非線形方程式を導けたならば、3性質の係数が確定するので、3性質の大きさが判明し比較が可能となり、発展波形が予測できる(例:非線形=100、分散=99、散逸=2ならばソリトン)。仮に、係数から予測が不可能であっても、弱非線形方程式1本の数値解析から波形が得られる。
(1)損傷抑制:水に気泡を混入させると、波の分散性が現れ、分散と非線形が釣り合うとき、危険な衝撃波をソリトンに変換することができる。そこで、散逸を抑制し分散を増幅させて、衝撃波のソリトン変換によって、水管の損傷の回避を目指す。
(2)洗浄:逆に、衝撃波を形成させることによって、管壁の汚れを、衝撃波の熱的な散逸効果によって洗浄する。気泡振動の振幅の適切な制御により、散逸効果の向上を狙う。
<参考>本研究にかかわる知財・発表論文等(特に代表的な成果論文):
1) Kanagawa, T., Ishitsuka, R., Arai, S. and Ayukai, T., “Contribution of initial bubble radius distribution to weakly nonlinear waves with a long wavelength in bubbly liquids,’’ Physics of Fluids, Vol. 34 (2022), 103320.
2) Hasegawa, T. and Kanagawa, T., “Effect of liquid elasticity on nonlinear pressure waves in a visco-elastic bubbly liquid,’’ Physics of Fluids, Vol. 35 (2023), 043309.
3) Kawame, T. and Kanagawa, T., “Weakly nonlinear propagation of pressure waves in bubbly liquids with a polydispersity based on two-fluid model equations,’’ International Journal of Multiphase Flow, Vol. 164 (2023), 104369.
4) Ayukai, T. and Kanagawa, T., “Derivation and stability analysis of two-fluid model equations for bubbly flow with bubble oscillations and thermal damping,’’ International Journal of Multiphase Flow, Vol. 165 (2023), 104456.
学位記授与式・学生表彰
2023年3月24日、金川研から7名(M2の3名、B4の2名、B3の2名)が修了・卒業しました。
全学卒業式において、長谷川建(B4)が工学システム学類総代を務めました。研究群学位記授与式において、加賀見俊介(M2)が構造エネルギー工学学位プログラム代表者を務めました。
12件の表彰がありました:
[修士]- 日本機械学会三浦賞(加賀見俊介・川目拓磨)
- システム情報工学研究群長表彰(加賀見俊介・川目拓磨)
- 構造エネルギー工学学位プログラム長表彰(田中克典)
- 筑波大学校友会江崎玲於奈賞(加賀見俊介)
- 学長表彰(学修)(Quoc Nguyen Nam)
- 副学長表彰/大学院進学奨励奨学金(長谷川建)
- 理工学群長表彰(長谷川建)、SICE優秀学生賞(Quoc Nguyen Nam)
- 日本機械学会畠山賞(長谷川建・邉見和史)
おめでとうございます。
第2回数理の交差点
第2回数理の交差点において、金川が、以下の講演を行いました。
2023年3月23日木曜14:10 — 14:40
題目:混相流体力学と超音波医療に関連する非線形波動方程式の数理物理
要旨:多数の気泡を含む液体中を伝播する超音波の弱非線形発展過程を記述する非線形波動方程式(KdV 方程式や非線形Schroedinger 方程式) ,およびその解としての衝撃波や(音響的な) ソリトンの数理物理を述べる.また, 最近盛んに研究がなされている, 超音波医療応用(強力集束超音波による低侵襲的な腫瘍焼灼や超音波造影診断用の脂質膜で覆われた気泡のモデリング) に対する数理物理的側面からのアプローチにも触れる.
プレスリリース(Phys. Fluids)
超音波造影診断用の膜で覆われた気泡の集団としての音響特性を調べ、膜の圧縮性による超音波の減衰が、液体の圧縮性による減衰よりも大きい場合(造影剤)がある点を、理論的に予測した論文が、AIP (米国物理学協会)の Phys. Fluids (IF = 4.980) (MechanicsでQ1(18/138); Physics, Fluids & PlasmasでQ1 (2/34)) から出版されました。
学生視点の金川研紹介(5)
4年間(内1年間休学)在学したM2の学生に紹介を書いてもらいました(金川)。
本研究室の特徴・売りなどは、他の研究室生の方々が綿密に書いてらっしゃるので、私個人が4年間金川研究室にいたことを振り返って、徒然なるままに書いてみます。以下、研究室選びに参考にならない情報が多いので、その場合、他の研究生が書いた情報を当てにしてください。
〇志望理由
厳密かつ分かりやすい授業を通じて、研究室に興味を抱いた。ゼミが無く、コアタイムが皆無。実験が肌に合わなかったので、理論研究がいいと思った。以上。
〇研究テーマ
自分から「これがやりたい!」「これをやらせて!」みたいなのがあれば、先生と相談の上で進められると思われる。が、おそらく、ほとんどの研究室生は、先生からの打診によってテーマが決まっただろう。少なくとも、自分の場合はそうであった。打診された内容に興味があり、できそうなら決定。そこまで興味がなく、遂行できなさそうであれば、他のテーマに……といったところか。研究室生によって決め方は異なってくるのかもしれない。ちなみに、フットワークの軽い理論研究だからこそかもしれないが、3年間で2つ以上のテーマを受け持つ人も一定数いる(ただし、同時に、2つ一遍に研究を進めることは、あまり無い)。
研究室全体の研究テーマに関して少し付言しておくと、理論研究;すなわち流体力学や音響学などにおいて、学術的な基礎理論を深化させることを中心に研究していること自体、国内・国外問わずあまりないと思われる(学会参加してみて、周囲の研究を見ていると、なんとなく分かる)。また、応用先が多様になりうることも無視できないだろう。応用先としては、医療工学(例えば、気泡・音波を用いたDDS,がん治療)や土木工学の分野だけでなく、最近では地震・火山活動の分野も射程圏内であり、さらなる研究発展の余地が見込まれる。
〇研究の進め方
基本的には、先生とのマンツーマンの上で、研究は遂行される。週1程度で研究の打ち合わせ(進捗報告)がある。コロナ前は対面であったが、収束?した今となっても、基本的にはTeamsを通じて行われる。おそらく、これからもTeamsを活用するスタンスで研究のやり取りは行われるだろう。このため基本的に、研究活動のほとんどは自宅で済ますことができる(研究も紙・ペン・パソコンがあれば研究できるので)。弊害があるとすれば、研究室に行く必要がないことかもしれない(宅通である自分は1年くらい研究室に行っていない……)。打ち合わせ日時は、基本的には融通が利く。研究で相談したいことがあったりすれば、自分から進んで打ち合わせを希望することも可能である。
〇研究室の最近の雰囲気
意外にも、理論研究をする人のイメージとは裏腹に、元気な人が多い印象を受ける(必ずしも体育会系を意味しないことに留意)。そのためか、最近、小規模ながら学生主体の研究会のようなものが催されており、活発なやり取りが行われている。自分は参加できていないのであくまで推測でしかないが、他人の研究のやり方、抱く悩み、考え方に触れることができる機会は、この研究室ではあまりないので、自分としてはとても良い兆候のように感じている。
〇学会(感想)
日本国内で催される国内学会と、海外で催される国際学会がある。本研究室は論文だけでなく、学会発表にも重きを置く研究室なので、研究室に所属した人は基本的に国内・国際のどちらも経験することになる。自分の場合、コロナの影響でオンライン発表ばかりであった。オンライン発表であれば、全て自宅で済む。それはそれで長距離移動に手間取ることないし、現場の緊張感も半減されるので、楽である。しかし楽な分、切り捨てられ、触れることができないものは、当然のごとくある。もちろん、観光ができないのは悲しいことだが、おそらくオンサイトの醍醐味はそれだけではないだろう。
そう思うに至るのは、自分が数か月前、ようやくオンサイトでの学会に参加することができた、個人的な体験に由来する。一口で言うと、“現場性”のようなものになるのかもしれない。それは、個人的な体感であって曰く言い難い。もしかすると、これから書くことは、思い違い・妄言かもしれない。単刀直入に言えば、学会とはなんたるかをようやく垣間見たような気がしたのであった。「なぜ、学会などという“人間”の営みがあるのか?」 私が現場で感じ取ったものは、言葉にしづらいが、少なくとも単なる情報交換以上のものがあった(気がする)。もしかすると、みんな久々のオンサイト学会だから浮足立って活気づいていた……からかもしれない。……しかし、卒業する今となっても、結局“学会とは何か”まだよく分かってなどいない。何はともあれ、最近ではようやく、オンサイトで催される国内・国際学会が目立ってきたので(十分にコロナに気を付けた上であるが)、発表準備にあくせくしながらも、学会を愉しんで頂きたい(迷走してしまったが、堪忍してください)。
〇休学について
実は、自分は大学院の間に1年間の休学をした身である。休学した理由などは省くが、ひとまず、一般的な情報を書いていこうと思う(詳細な部分は、先生やら支援室のほうに問い合わせてほしい)。
以下、ほとんどのB3には関係ないかもしれないが、休学する大学院生は、少なくはないらしい。他大学では不明だが、筑波大では休学に関する費用はかからない。0円である。しかも、どのタイミングで休学を開始して、どのくらいの期間休学をするのかもある程度の自由がある。参考までに、自分の場合、本来ならば卒業間近である12月から休学を開始して、翌年の10月に復学している(在学中の学費は生じ、休学中の学費は生じないことに注意すること)。秋学期から復学する場合、通年科目の是非が心配されるが、担当教員と話を通じて許可をもらえれば、秋学期分の授業を受けるだけで良いことになる(ありがたい)。
奨学金については、自分は日本学生支援機構のものを受けていたが、給付が停止されるだけであった。 さて、休学するか否かずいぶん迷ってしまった情けない自分であった。しかし、僥倖にも自分の場合、金川先生だけでなく、諸担当教員と相談することができた。普段の学生生活からは想像できないことであるが、先生方は何も、学問だけの先輩ではなく、“先”に“生”きる人ゆえ、生きる(?)にあたって有益な助言を頂戴することができたりする。もちろん、友人・親に相談することもあるだろう。ただ、先生方も良き相談者になりうることは留意しておくと、損はない。
・休学期間何をするか?
休学する学生はいわば、学生という仮身分を持った、剝き出しの人間となる。基本的に自由である。海外インターン行っても良し。引きこもりになっても良し。とにかく、自由である。しかし、自由は必ずしも良いものではなく、かえって重荷になることもある。その時間の使い方は個人の資質が問われ、どんな人生経験を積むかはあなた次第である(1年無駄に年を食う場合だってある)。復学に向けて、研究をしても構わない。私も色々と一段落したころになって、夏から研究を再開しようとし始めた。
・休学と就活
M2であった自分の場合、当然、休学期間に就職活動をすることになった。会社にもよるので、一般的なことはわからないが、個人的な印象としては、休学したからといってマイナスな印象を持たれることはない。問われるとするならば、休学中に「何を、どのような目的で遂行したか」にあるだろう。しかし、休学中に何をしていたかをそこまで聞いてこない会社もチラホラとあったりする。
・個人的な教訓
悩んで、それを晴らしてから行動するものだと思っていた。しかし、実のところ、逆もありうるように思えた。行くところ行ってから、悩む。そのようなパラドキシカルな方法が、あると思う……これはおそらく、研究にも関係してくると思う。
〇どんな力がついたか
4年間で具体的にどんな力がついたのか。難しい。しかし、明らかにB4の頃の私と今の私は違う。何が違う?数学・物理的知識,文章の書き方,プレゼン能力……と言おうと思ったが、あえて抽象的に捉えてみると、いい加減な言葉かもしれないが、「批評性」といったところだろうか。批評性。「これじゃない……これじゃない……これだ!」作って直す、また作って直す……その繰り返しの中で、切り捨てる情報、取り入れる情報の選択眼が芽生えてくる。「本当にこれか?これはどうだ?」観点を変えて見てみることも重要だろう。自分でうまくやれたと思ったところが、問題点になっていたりするのだ(だからこそ、論文・プレゼンを作るうえで、他者の視点,客観・公的な観点が重要になってくる)。先生方を見ていても、この辺の情報作業がとても効率的なものになっていることは窺え、無駄がなく洗練されている(professor,professionalの語源は、「公言する」ことを含意している)。うまく言えず申し訳ないのだが、ひとまず、この力(?)の自覚と発達が挙げられるかと思われる。
〇研究室配属レース
現在のシステムは微修正されているみたいですが、4年前、自分が経験した配属レースの印象を述べておきます。
確か2人枠に5~7人で混戦したと思います。決して成績が良いとはいえない自分は、実は最初から最後まで金川研にエントリー?していたわけではありません。一時期、あまりにも混戦していたので、何となく別の研究室(第2希望)に唾つけたまま、静観していました。たぶん、同じような人は多かったのかもしれません(たぶん、このようなタイプの人が多いと変動が生じやすいのかも?)。
GPAバトルが繰り広げられ、ある程度落ち着いてきた終盤戦のちょっと前、ちょうど金川研希望人数が2人になったタイミングを見計らってGPAバトルを挑んでみたところ、勝っちゃいました。負けたらおとなしく第2希望で勝負しようと思っていたので、ラッキーでした……
今ふり返ると、滑稽ですね(他の研究室ではもっと熾烈でドロドロの心理戦が繰り広げられていたみたい?)。晴れて私は、そのまま金川研に配属という形になりましたが、しかし落ち着いていた終盤にバトルが生じるとどうなるか。無論、ビリヤードのようにカオスティックな玉突き現象が発生し、各研究室において再度GPAバトルが生じます。これは終盤間近で落ち着いていた人からすれば、たまったものではないでしょう。それゆえ、あまり1つや2つの研究室に固執せず、候補先の見当は広げた方が良いと思います。
一応、負けた人たちのその後についてフォローしておくと(ぶっちゃけ友人でもなかったので良く分かりませんが)、そんなに何か、人生で重大な出来事になってしまったみたいな印象はないです。普通に皆さん学生生活をエンジョイしている気がします。要するに何が起きて、どうなるのか、分かったものではありません。希望する人気研究室に入っても「なんか反りが合わない」(そして最悪、鬱になる)こともありますし、「ここは嫌だ、おしまいだ」と言っているわりに、何だかんだで性に合っている研究室だったりすることもあります。もしかすると、諦めていた研究室に入ることだって、ありえるかもしれません(M2)。
Chemical Engineering Science
Elsevier社の Chem. Eng. Sci. 誌 (IF = 4.889, 採択率23%) に、菊地勇成(元M2)の論文が掲載されました。超音波造影気泡の「集団」としての非線形音響特性のマクロ連続体力学に基づく数理モデリングを報告した既報の続編です。
学生視点の金川研紹介(4)
B4の学生に金川研の紹介を書いてもらいました。主に、国際誌への原著論文投稿のプロセスに焦点をあててもらいました。学振DC1申請(=M2の5月)までに論文採択を目指した指導を重視しています(博士後期課程に進学しない場合でも、博士前期在学中の採択を目指し、ほぼ全員が達成しています)。ただし、意欲や成果次第ですが、早い場合には、B4であっても投稿例・採択例が複数あります(金川)。
こんにちは。金川研B4の学生です。
金川研に配属された当初から取り組んでいたテーマで論文を書き、幸いにも論文を採択していただくことができました。論文を書く過程で、金川先生をはじめとして、研究室の方々から多くの有意義な議論や指摘を頂きました。この場を借りて御礼申し上げます。ありがとうございました。
ここでは、私が論文を書く過程で受けた指導を交えて、金川研の紹介をしたいと思います。
・どのような指導を受けたか
卒論のテーマは、配属後比較的すぐに決定しました。夏頃までは、
- 文献調査と数式変形を行い、定期的に進捗報告する
- 今後の方針に迷ったときは逐次相談し、研究の方向性を決める
といったことをひたすら繰り返していました。研究の相談は基本的にチャットで行いますが、チャットのやり取りだけでは難しいようならばオンライン面談(対面も可)を行うという感じで、面談については希望すればすぐに日程調整をお願いすることができます。このように、相談できる機会が比較的多いことは、研究作業を進めるうえで有利な点であると思っています。
その一方で、ゼミや定例ミーティングはないので(ただし、配属直後は基礎知識の勉強や研究打合せがあるため、定期的に金川先生とのマンツーマンのミーティングが入ります)、一人で考えていても分からないことがあったら自分から相談を申し込むなど、主体的に動く必要はあります。
私の場合、数式変形が完了し、データもそれなりに集められたのが9月頭ごろで、その頃から論文執筆に着手し、書ける部分から書き始めました。数日に一回原稿を提出し、指摘を受けた部分を修正し、必要があれば面談する、ということを何度も繰り返すうちに原稿が出来上がっていきました。10月中旬~下旬に原稿が完成し、論文を投稿しました。
・何がきついか
これは他の方もおっしゃっていることですが、金川研は作文の指導に力を入れていることもあり、文章の書き方に関してはかなり厳しいと思います。大学の講義で課されるようなレポートとは異なり、論文では研究背景から始めて、研究手法、内容、結果、議論を一本のストーリーとして筋が通るように書くことを求められますが、私はそのような文章の書き方には全く慣れていなかったため、毎回の添削で大量の指摘を受けました。指摘には、論理展開がおかしいなど本質的なものから、段落構成が不自然、文法語法がおかしいなど、研究の内容とは直接関係していないが文章の書き方としてまずいというものまであり、大半の指摘は理屈で詰められるので、慣れていないうちはきついと感じるかもしれません。ただし念のため、理屈で詰められるとはいっても、あくまで研究内容に対してであり、決して人格などまでも否定されるというわけではないです。実際、指摘内容を後から振り返ってみると、確かにあれはおかしいな…と思うことも多々あります。また、図表の書き方、キャプションの書き方、論文特有の英語表現を知らなかったので、新しく覚えることが大量にあったのも個人的にきつかったと思っています。
加えて、査読の対応も大変でした。様々な視点から鋭く指摘を受け、当然ごまかしは一切効かず、査読者が納得できるように丁寧に説明することが求められました。査読者への回答書の書き方についても、論文と同様に金川先生に細部までご指導頂きました。以前、先生からは、大変さでいえば、理論解析自体よりも、むしろ論文を投稿して査読者と戦うことの方だというようなことを聞いていましたが、その通りでした…
・得られたと思うものは何か
まずは、テーマの決定からはじめて、研究結果を論文にまとめるまでの過程を実際に経験できたこと自体が非常に価値のあることだと思っています。その上で、論文を完成させる過程で、日本語・英語問わず文章を書く力、情報収集能力、効率の良いタスク処理の方法などを身に着けることができました。
一方、査読対応で如実に感じたことですが、書き手として伝えたい内容が客観性を欠いていると、読み手に全く伝わらないということを実感しました(このことが分かったのは収穫でしょうか)。日頃から客観的に明快で読みやすい文章を書けているか?を意識することで、次に論文を書く際にはより質の高い論文を書けるように精進します(B4)。
講演表彰(CFDシンポ)
鮎貝崇広(D2)が日本流体力学会より若手優秀講演表彰を受賞しました。比較的最近着手したテーマでの受賞となりました。
対象講演:マグマ気泡流中における地震波伝播を記述する数理モデルとその数値解、第36回数値流体力学シンポジウム(2022年12月14~16日)
学生視点の金川研紹介(3)
B4の学生(留学生)に研究室の紹介を書いてもらいました(金川)。
私は2022年2月に金川研究室に配属されたB4です。留学生ですので日本語がおかしいところは気にしないでください。今までやったテーマは金川研究室の先行研究:「液体中にある気泡の媒体に入射する超音波の伝播の特徴」の他の方面で調べます。ただし、私の研究は「バイオ・医療」の方面に着目し、超音波造影剤の「リン脂質シェル(phospholipid shell)の座屈(buckling)と破裂(rupture)」による、(多数気泡を含む液体の中に)超音波の伝播にどんな影響があるか」を調べています。流体力学と材料力学をあわせたテーマと言えます。研究で得られた情報は学会で発表し、海外のジャーナル論文に書きました。
・学会発表で得られたもの
学会に参加・発表の前には、金川先生から作文・プレゼンに対し細かい指導が入ります。普通、学会のための原稿はA4の2-5枚ぐらい必要です。学会によって、ポスタ・スライドを作ることも必要ですが、私に対してもっと難しいのは「どんな部分を重視しなければならないか」です。学会・セッションによって、参加者の期待・自分のテーマの基礎と見慣れる程度が違いますので、発表の内容を調整し、編集しなければないことをわかりました。しかしながら、私の経験は不十分なので、編集が必要な部分は金川先生の指導のおかげでわかりました。その上、口頭発表には、練習の段階で金川先生から軽微なところまで、かなり細かく添削して頂きました。学会は自分の得られた情報を発表する機会だけでなく、他の研究グループからの知識や進み方や見方などをよく学び、他の先生・研究者・学生からの意見とネットワーキングも得られたために、研究や自分の進歩に対する利点が少なくないと思います。特に、実戦から、仕事・社会に重要なソフトスキルの一つとしてプレゼンのスキルはまだまだ不十分なことも確認でき、今後頑張ります。
・論文投稿で得られたもの
論文投稿の過程について書きます。金川研の先行の論文の骨に基づいて、8月に論文を書きました。問題設定、理論解析からの情報についての文章は、先行研究と似ているために書きやすいですが、IntroductionまたはDiscussionはきちんと・正しく書くことはやさしいではないと感じました。Introductionは他の研究グループの結果を正しく紹介し、自分の研究はどんなことが新しいか、どんな貢献を持つかを述べました。情報を得るために、文献レビュー(Literature Review)し、多く論文を読むことが必要です。私に対して、論文を読む時、頭の中で、著者らとの会話を想像し、著者と相談し、情報をまとめます。論文を100%理解や全ての式を自分で導出までは残念ながらできませんでしたが、手法の考え方・結果・結論・式の意味・式の解析に注意し、様々なことを学びました。一方で、discussionは自分の得られた情報を解釈することで、biasedでない文章を書いた方がよく、簡単なタスクではないと思います。今回の論文は幸いにも採択されましたが、もっとわかりやすくて、もっとコンサイス、もっと自然な表現を使用したいので、今後自分の英語能力・表現方法も改善のための必要があります。
査読の過程では、referees からコメントとリビジョンの要求を受けました。refereesのコメントから自分の説明方法や自分の知識を改善できるので、感謝します。実は、refereeの詳しいコメントから、研究のlimitationをもっと明らかになり、refereeからすすめられた論文と情報提供のおかげで、研究のlimitationを解決できる可能性がある手法も得られました。結果として査読の過程はストレスせずに、きちんとrefereesのコメントを眺めて、研究に対する価値が高まることが少なくないと感じました。
論文が採択されたは「勝」までもないですが、用心し、心の中に「勝って兜の緒を締めよ」を刻みます。研究が進むと自然的に、様々な新しい困難を出たが、落胆しないで、面白いと思います。一歩一歩解決しながらすすむと感じます。
・他の学生の雰囲気と学生との研究面での交流
日本人ではないので、言語の壁で、効率が高い話しが難しい面がありますが、研究室の先輩や同輩方から私の質問・議論について熱心なアドバイスをもらいましたのでほんとに感謝します。研究面での交流で、新しい考え方・問題解決する手法などは自分の研究によく助けます。私に対して、印象がもっと強いのは、アイデアを交換する時、研究室の皆様はpositiveな意見を挙げて、私の意見を否定せずに聞いてくれることです。このことはとても快適な環境だと思います。自分の経験から、アイデアと自分の「我」を強く言う人が少なくないと感じるので、金川研の学生方のように快適な研究相談ができる環境は、私に対して幸運なことです。
・普段の過ごし方
段階や学期によって変わりますが、一週間内は研究:4日、自由:1日、授業と宿題:2日です。授業がない学期には1日は自由、残りの日は研究の日です。研究のための日はだいたい6-9時間ぐらいで研究しました。どう過ごすかは自由日に決めました。例えば、段階Aの式1と式2を変形するのは4時間ぐらいかかり、式3を変形するのは5時間かかると予想すると、一日中は式1,2だけを式変化し(式3は次の日に)、1-2編の論文を読みます。文献レビューの段階には論文を読んでばっかりですが、情報を体系・まとめの時間もあります。もちろん、予想外の事態もありますので、予定を細かく立てすぎると困るから、予定は大体で設定します。もっと早く終わると残りのタスクを部分的に準備・完成します。強制参加のゼミやコアタイムなどはないので、自分は好きな場所、好きな時間で研究することできるので、ストレスはよくコントロールできますが自己管理も必要です。
・厳しい、きつい面、緩い面
自分に対しては言語の壁以外には、厳しいことがほとんどがないと感じます。理由のは、金川先生からは指導やアドバイスの意味と理由も含めてよく説明されるので、強制される感じがあまりません。その上、課題や問題解決や理論解析は厳密にすることは「当然」、「必須」と感じるので、厳しくないと思います。
私に対して、研究はどこでもいつでもできること、圧力があまりなくて、自分のペースでやること、指導教員から詳しく意見・指導・提案をもらえることは緩い面と感じます。
・身につくと思われる、身についたもの
研究する過程には、式を参考する時、論文によって使用する式が違う場合が多いです。そのために、式を導出する仮定・適応できるケース・意味を理解することは大事とわかりました。その上、論文調査も大事と思います:論文調査で研究の背景、進歩、議論間の比較的な知識をわかること上で自分の研究方向を決定できます(B4)。